聖戦

 荘厳なファンファーレが響いた。
 ああ。もうこんな時間か。僕はクリスマスパーティーと称された酒盛りに呼ばれてひどく生産性のない時間をすごしている最中だった。
 日付けが変わる合図。サンタがくるとかこないとか、プレゼントがもらえるとかもらえないとか、雪が降ったらその後一年は幸せだとか。所説あるけれどそんなことはどうでもいい。単純に暇を持て余している。
「さぁ、刻は満ちた……聖戦のはじまりだ」
 一年来に会う友人、会都が厨二を拗らせた何かを発した。中学時代から鍛えていた柔道で体格は僕とは比べ物にならないものだったが、それに拍車がかかっていた。
「ふッ。いいだろう。今日こそ俺とお前の縁に引導を渡してくれる」
 腐れ縁の沙彩は通常営業で会都の茶番に便乗した。いや、通常営業なんかではなく、二割増しで楽しそうだ。そして五割増しでかわいく感じるのはきっと気のせいではない。
 とにかく、バカとはこいつらのことをいうのだろうと内心で思っている。そいつらとつるんでいる僕もバカなのだという自覚はあるが、バカの露呈は避けたい限りだ。
 沙彩が定価6500円で購入したおもちゃの剣を握った。柄にあるボタンを押したのか、きらきらと刀身が光る。
「まさか、その光はっ!?」
 会都が身構えた。
「遅い! 必殺! フリーデン・ヴィントシュトース!」
 沙彩が繰り出した渾身の突きは、会都の厚い胸板に命中した。そして安全設計ゆえに刀身がぐりゃりと曲がった。
「ぐわぁああああああ!」
 それでもなお会都はその痛みに打ちひしがれた。茶番がすぎる。柔道選手ではなく、役者になるのはどうだろうかと思うほどに。
「我の圧勝だ。これで過去を一つ清算できたな」
 剣を一度薙ぐとともに、低い声で唸った沙彩の演技にこらえきれなくなったのかうずくまったまま会都は吹き出した。
「な! なによ!」
「べーつに。なんでもないよ。なぁ龍樹」
「なんで僕に話を振るんだよ」
「お前ならわかってくれるとおもって」
 まったくもってわからんが。言っておくが僕は鈍感だ。
「あ、お酒もうないんだけど龍樹くーん。おさけー」
「知らないよ。僕はまだ未成年だ。一滴も飲んでないよ」
「すまんね。一足先に成人だよ。龍樹くーん」
 沙彩も机の上に乗ったチューハイをちびちびと飲んだ。
 もう大人になったんだなと思わずにはいられない。僕は彼女の入れてくれたココアを飲んで二人のどうしようもないやりとりをこれからも眺めることになるんだろう。

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