ばあちゃんには敵わない。

 あまりにも鮮明な夢だった気がする。だからこそ、それを整理するには寝起きではあまりにも難しい。
 味噌汁を啜る。
「そういえば、今日から月9変わるねぇ」
 多次郎が読んでいる新聞を横目に見ながら雅子が言った。
「テレビ見る暇あったら、店の準備てっとーとくれ」
「わしもテレビの時間じゃ」
「じいさん、店番」
「へーい」
 きぬた一家は父を除く家族で雑貨屋を切り盛りしている。きぬたの祖母の祖母。即ちきぬたにとってひいひいばあちゃんの代から雑貨屋を営んでいたという。
 なかなかに歴史のある老舗だ。客足が芳しくないことも相まってばあちゃんに命令され、じいちゃんは店と家を繋ぐ襖を潜っていってしまった。
 春之もまた、時計を確認し席を立つ。ネクタイを締め、鞄を背負う。
「きぬた、あんたも今日学校は?」
 母の問いかけに、きぬたは不機嫌を露にする。
「は? 行くわけないじゃん」
「あんたねぇ」
「いいじゃないか。義務教育じゃないんだ。好きにさせなさい」
雅子が小言をつらつらと吐こうと構えたところで、春之がそれを制した。
「じゃあ、きぬた。ばぁちゃんと一緒に店番せんかね」
「ごめん。忙しいんだ」
「そうかい」
 雅子が目で何が忙しいよ。どうせゲームするだけでしょと睨んでくる。きぬたはその通りだよと。と内心応えた。
 貴依は寂しそうに、表情を曇らせ俯いた。
 きぬたは味噌汁でごはんを一気に胃の中へとかき込む。
「ごちそうさま!」
 ぶっきらぼうに言い放ち、部屋から逃げるように飛び出した。

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