愛無き

教室の中には誰も居りませんでした。

昔通っていた塾が事実上の廃校となり、何年経ったでしょうか?

そのビルが今月末に取り壊されると、サイトニュースで知りました。
私は終ぞ居ても立っても居られなくなり、有給を申請し片道二時間の列車に乗って、此処まで来てしまいました。
今まで体調不良以外で有給を使うなんてことはなかったので、僅かな罪悪感が芽生えました。

もう廃校となった塾。
生徒などいるはずもありません。
この町の駅で降りる人など誰も居りません。

ここに辿り着いたときに、懐かしさがぽつりぽつりと浮かんでくるものかと思って居りましたが、
この惨状を見てしまっては、懐かしさよりも衝撃が優ってしまいました。
「廃」と言う文字に相応しい程に、ビルは風化し草臥れておりました。

あの日、この町に竜巻が起きた日。
昔からこの地には龍が住んでいるなんて、実しやかに言の葉で語られておりましたが、
巷では「龍の逆鱗に触れた」「逆鱗災害」などと言い囃されております。
彼の厄日も私、佳世、彩は「満願成就の鶴」を織っておりました。
先生が私たちの担任となってから織るのを辞めた日はございませんでしたが、終ぞ私たちの満願果たされる事はありませんでした。

その証拠に教壇の上には、折り鶴が三羽残っておりました。
無残にも残された折り鶴はあの日のまま変わらずありますが、そこには哀ばかりが止め処なく溢れているのでございます。

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