混濁

 記憶の混濁が始まった。
 最初からわかっていたことだ。
 だから記憶の混濁がどういうものか想像はしてみたものの、実際に起きていることはまったく別だった。

 最初に消えたのは、彼女の記憶だった。
 消えるな。と願ったはずだったそれはいとも簡単に私の中から消えていくのだ。

 胸の中にあるメモリ38ブロックがパタンパタンと閉じていく。一ブロックずつ。洗濯機やサラダのようにぐちゃぐちゃとかき回されて最後は手品のようにポンと消える。

 呆気ない。ああ、味気ない。

 目から涙がこぼれたがそれがなぜなのかわからない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました